このたび、SCD・MSA全国患者連絡協議会が行った厚労省への要望書提出に、北川事務局長と参加しました。その模様を私なりに理解した範囲で報告させていただきます。
なお、この日の要請活動についての『連絡協議会ニュース』もあわせてご覧ください。また、要望項目に対する厚労省からの詳しい回答は、連絡協議会ニュースの次号に掲載されます。
日時 2018年6月12日(火)
午前11時50分~午後2時40分
会場 参議院議員会館 204号室
参加者 協議会側 15人(5団体)
厚労省側 19人(12部局)
出席国会議員
尾辻かな子(衆院・立憲民主・大阪)
川田龍平 (参院・立憲民主・東京)
丸川珠代 (参院・自民・東京)
その日の富山7:19発の新幹線を利用、東京駅から地下鉄丸ノ内線の国会議事堂駅で降り、徒歩5分で参議院議員会館に9時40分頃到着しました。ボディチェックを受け入場、所定の時間まで会場で事前打合せを行いました。
川田議員の井波秘書が司会でその場を仕切る役割でした。事前に提出していた要望書の8項目を3部に分け、部ごとに厚労省側担当者を入れ替えての対応は慣れていて、さすがに議員秘書の仕事と感心しました。進め方としては、項目順に、①協議会側が口火発言、②厚労省回答、③自由質疑というやり方でした。
<質疑の経過>
要望内容は、1.治験の現状、2.iPS細胞等への財政措置を、3.医療費助成の手続き簡素化を、4.軽症者特例(重症度分類)の見直しを、5.新薬承認での海外のデータやiPS細胞の取り扱い、6.SCD/MSAのリハビリ充実、7.拠点病院の整備、8.既存の制度の徹底を、などです。(項目の詳細は連絡協議会ニュースを)
1については、「辻教授のコエンザイムは13施設で患者登録が始まり、6施設の倫理委員会で承認され、2施設で治験が始まっている。」(厚労省、以下厚)
2については、「iPSを使った研究はまだ基礎段階であり文科省の所管だ。」(厚)
3については、「臨床調査個人票が多項目にわたるが、対象疾患が拡大されたとき他の省庁から認定基準をしっかりやれと言われている。」(厚)
4については、「27年の難病法は5年目で見直すことになっているが、軽症者特例については見直しの対象とはなっていない。」(厚)
これに対し協議会から、「難病法改正前は毎年約1500人患者が増加していたが施行後は逆に1500人減った。これは今までにないこと。重症度分類によって3,000人もの患者が難病対策研究事業や医療費助成制度から排除されているのではないか」と反論しました。私も「この病気はふらつきが出てきた段階では重症度分類によるとせいぜい2で対象から外される。しかし進行性難病は症状の軽いうちから治療するほうが効果は大きい。近い将来、異常たんぱくの増殖を抑える新薬が期待されるが、重症度分類は早期治療を妨げる。進行性難病は確定診断が出たら即認定するという考え方はできないのか」と訴えました。
5については、「iPS細胞で病態を再現して薬効を確認する手法は注目しており、将来的には検討に値するが、一方でヒトの臨床試験の代替とはならない。現時点では科学的知見が足りない。」(厚)
6.7は省略。
8では、厚労省が「受給者証による適用が地域によって異なっているとは承知していない」と回答したことを受けて私が配布資料にそって、転倒事故によるケガの治療が受給者証記載の「付随して発生する傷病」として適用されない事例をあげ、特に北陸地方の行政のホームページでは対象医療の範囲を狭めた表現であることを説明しました。そして厚労省にたいし、対象となる医療の範囲や指定医療機関の取り扱いを法の制度より狭めて運用している都道府県(行政のHPを調べた結果はこちら)に対し、是正の通知等を出すなど制度の趣旨を徹底してほしい」と求めました。(厚労省に配布した資料はこちら)
<個人的感想>
●治療法や新薬開発についての厚労省の回答は、運動失調症研究班の水澤先生たちから得られる最新情報以上のものはなかったと思います。
●ただし最新の知見について国としてどう受け止め、今後どんなテンポで臨床に応用していく考えなのか、その時点でのスタンスがわかるだけでも有益でした。
●そうした意味で、私たち患者側が大きく期待していたiPS細胞を使った創薬については、まだ研究段階で文科省マターであり、われわれ(実用)レベルではないと、厚労省が意外と冷静(慎重)であることがわかりました。正直がっかりでしたが、期待が前のめりになってはいけないと改めて覚悟できました。
●軽症者特例について厚労省は、初めは見直さないと断言していましたが、終了後、担当者が脊髄小脳変性症の難病登録患者数が減ったことについて関心を示していました。見直しにかじを切ってくれればよいと願っています。