2016年 定例総会記念講演会 要旨

演題: 「会員・家族の口腔衛生と嚥下障害について」
講師:  富山県リハビリテーション病院・こども支援センター
         歯科衛生士        石野 美彩子  先生

口腔ケアには次の二種類のケアがある。

  1. 器質的口腔ケア:口をきれいにする、つまり歯、口の粘膜、舌等の汚れをとることで、普通の歯磨き。
  2. 機能的口腔ケア:口への刺激やマッサージにより口腔機能を高める。

口腔ケアを実践することにより誤嚥性肺炎を防止できる。(ある施設では口腔ケアにより誤嚥性肺炎がゼロになったとの報告もある。) 
誤嚥性肺炎は口から菌が入るだけではなく摂食嚥下機能障害で、食べ物、唾液が気管、肺に流れ込むことにより起こる。つまり機能の低下により咳払いやむせることができなくなり、気づかないうちに誤嚥し、肺炎をおこすことで、つまり自分の汚い唾を飲み込んで肺炎を起こす。

また奥歯の裏側、舌の内側はとくに汚れが溜まりやすく、それが菌の固まりとなり、(これをバイオフィルムと言う)これがずっとついていると少しずつ吞み込み誤嚥性肺炎を引き起こす。また放置しておくと、虫歯、歯肉炎、歯周炎、歯槽膿漏へと悪化していく。定期健診により初期の段階で予防なり処置をすることが重要。

メタボリックシンドロームなどの生活習慣病をさかのぼると、栄養摂取に関わる咀嚼や咬合機能、そして重要な口腔内機能への影響へたどり着く。これをドミノ倒しに例え「メタボリックドミノ」という概念で説明された。

口の清潔にすることは当然のことであるが、機能的口腔ケア(口腔マッサージ、嚥下体体操、リラクシゼ―ション)も大変重要であり、筋肉や脳が刺激され失われていた口腔機能を回復すると言われている。例えば嚥下体操の一つで、舌、唇やその周りの筋肉の衰えを予防、改善するパタカラ体操がある。

パタカラ体操の意味

パ・・・パッ パッ パッと早く言えない場合、唇のしまりが悪くなってきている。
・・・タッ タッ タッと早く言えない場合、舌の動きが悪くなっている。
    食べを口から送り込むことができなくなっている。
・・・カッ カッ カッと早く言えない場合、上手に飲み込むことが難しくなっている。
ラ・・・ラッ ラッ ラッ、 タッ タッ タッと同じで、舌の動き

噛むことも大変重要であり、噛むことにより脳の活性化、リラックス作用、認知症の予防、運動機能の向上、糖尿病の予防、骨粗しょう症の予防、免疫力の向上、QOL、肥満の予防ができる。また噛むことにより唾(唾液)が出やすくなり、消化を助け、粘膜を洗い流し、ウィルスの侵入をバリアーしてくれる。したがって唾液の分泌を促すことは重要。唾液腺は次の3つ、①舌下線 ②耳下腺 ③顎下腺があるので噛むことのみならず、耳の周辺、顎の周りをマッサージすれば良い。

 歯磨きの方法

歯磨きのときに汚れた歯磨き剤等が気管に入らないようにする。歯磨き前にまずうがいし歯磨き後、舌のケアをして、最後に再びうがいする。うがいができない人はふきとりウエットシートも市販されている。
仰臥の体勢での歯磨きでは、30度以上ヘッドアップし、まくら、タオルを入れて頭部を固定し、顎を引いて行う。車椅子や椅子に座っている場合も頸部前屈させ歯磨きを行う。頸部前屈が難しいときは横向きで行う。
歯ブラシはぶた毛よりナイロン製が良く、山切カットもよくない。まっすぐ小さいのが良い。
奥歯の溝、歯と歯の間、歯と歯肉の境なども磨き残しが多いのでよく磨くこと。
歯磨きの後、舌も磨く。入れ歯もブラシで金具周辺をよく磨く。
歯ブラシ以外の補助具の利用も効果あり・・・スポンジブラシ、スクイージングブラシ、クリーナーブラシ、歯間ブラシなど  
保湿剤の利用リフレケア・・・上顎、舌、頬の粘膜に唾液の固まりがカチカチになって上顎につく。ジェルを薄く塗ってとる。
口腔ケア用ウエットティッシュ・・・災害時に水がなくても歯磨きできる利点がある。

最後に全員で口腔体操を行い、講演終了。(文責・わかち誌編集部)

口腔体操手順

1.深呼吸(お腹が膨らむように鼻から吸って)
2.   (お腹がへこむようにゆっくり口から吐く)
3.首のストレッチ(横に右向いて、左向いて)
4.首を曲げる(肩に着くくらい)
5.前を向いて(顎を引く)
6.後ろを向いて(後ろにひっくり返らないように)
7.首を回す(右に、左に)
8.口を大きく開ける
9.口を膨らませる
10.舌を思い切り上に出す(鼻先に触るぐらい)
11.舌を横に出す(左右の口角に触れる)
12.舌を回す(右回し、左回し)
13.最後にまた深呼吸