わかち 第30号(2018年8月9日)

はじめに

会長 山崎 信代

6月10日日曜日に第12回 わかち会定期総会が開かれました。
患者13名、介護家族9名(遺族を含む)、石川SCD・MSA友の会、福井ハレバレ会4名難病相談支援センター1名の方々がお集まりくださいました。当日は北陸地方は「梅雨入りしたもよう」とのことで、参加者の方が持って来られたアジサイが優しく微笑んでいる様でした。わかち会は患者本人、介護家族、遺族と名前通りのわかち会になってきました。お互いに相手を受け入れ、清々しい笑顔が春の木漏れ日の様に感じます。

午後からは富山大学附属病院神経内科教授、中辻裕司先生お迎えし、最近のSCD・MSA研究の動向「~多系統萎縮症の課題~」と題して講演をお願いいたしました。
講演前半は一般的な脊髄小脳変性症・多系統萎縮症の臨床症状、分類、MRI画像の特徴を解りやすくお話しされ、後半には脊髄小脳変性症・多系統萎縮症は現在どのような研究がされているか、イン・ビトロの世界をお話し下さいました。iPS細胞を使う方法を臨床持っていこうと研究が進められていますが非常に難しく、再生医療にはまだ時間がかかる感じがしました。

私は気圧の低い時は普段以上にバランスを崩すことが多く辛い日が多いですが、日常生活では行動する前に「今から動きます。気を付けて!」と自分に言い聞かせてます。
皆さん、転倒に気を付けて梅雨に入り外の散歩ができない時は室内施設で歩き、室内に閉じ困らないようにしましょう。


定例総会報告

定例総会開催に先立ち、会員森川清友さん、北學さんのご逝去の報告と黙祷が行われ後、山崎会長の挨拶、来賓挨拶(石川SCD/MSA友の会)があり、引き続きまず最初に議長として宮崎会員が推薦、承認された後、議長からこの総会が定款第9条に規定する定足数を満たしたので有効に成立した旨告げられ、議事に入った。

第1号議案(29年度活動報告)、第2号議案(29年度会計報告)、第3号議案(29年度会計監査報告)、第4号議(30年度活動方針案)、第5号議案(30年度予算案)、第6号議案(30年度役員選任案…変更点:会計監査の東美智代さんが退任し、前年度幹事の北美智代さんが会計監査)について北川事務局長、久保会計委員から説明がなされ、議長はその承認を議場に諮ったところ、すべて承認された。

石川友の会の原会長、広瀬事務局長、また福井友の会の下坂会長も遠くから御出席して戴き有難う御座いました。
昼食後、下記の要領で講演会が行われました。

講演会

演題 「最近のSCD・MSA研究の動向」
     -多系統萎縮症の課題ー

講師  国立大学法人 富山大学付属病院
     神経内科 科長 中辻 裕司 教授 

上記演題で、前半はSCD・MSAの分類について、後半はリハビリテーションの重要性について学術的な立場から講演が行われました。

最初SCD、MSAについて全般的な説明があった。SCDでは小脳性運動失調(歩行失調、言語障害、眼球運動障害等)、またMSAでは小脳だけではなく脳幹もやられてくる。
SCDの分類については種々の分類方法があるが、遺伝形式からの種類によるものと病態によるものがある。
遺伝子形式による分類では、孤発性SCD70%、遺伝性30%(ほとんどが優性遺伝)で、遺伝性では原因遺伝子別にSCA1,2,3,6,31等多の種類がある。SCAの付いていないものとしてはDRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮)等もある。またSCA3(マシャド・ジョセフ病)は富山県に多く、脳幹部もやせてくる。SCA6 は純粋小脳型、CA31は小脳のみ。フリードライヒ失調症は世界で最も多い。
孤発性SCDの7割を占めるMSA(多系統萎縮症)は、その中でオリーブ橋小脳萎縮症が最も多く、他にシャイドレーガー症候群、線条体黒質変性症、皮質性小脳萎縮症がある。パーキンソン症状優位のMSA-P、小脳症状優位のMSA-Cの区別もある。

さらに本講演では分子病態からみた分類についてもかなり学問的な説明がなされた。SCDの多くは原因遺伝子のタンパクへの転写→翻訳時(DNA→RNA→たんぱく)に存在するCAGリピート(シトシン、アデニン、グアニンの略)の異常伸長に基づくと考えられている。即ちこの過程で作られた異常なポリグルタミンを含むタンパク質が脳内に蓄積することが原因と考えられている。認知症は蓄積するタンパク質が違う。(ex.オリゴマー)
ポリグルタミンの蓄積やRNAがくっ付いてたまることが原因と考えられることから、ポリグルタミン・SCAの治療への展望としてはRNAの毒性をどう処理するか、ポリグルタミン酸の分解をどうするか、等が考えられる。(異常ポリグルタミン酸の発生抑制→永井先生)

講演の後半ではリハビリテーションや薬について説明がありました。
・歩けば歩くほど良い。持続的に毎日歩くことがリハビリの効果が大きい。
・ゆっくり大きく歩く→障害を受けていない部分も活性化する。
・グリア細胞の活性化→神経細胞を活性化する。
大阪森ノ宮病院では神経学とリハビリテーション医学を融合した神経リハビリテーションを特徴としていることの紹介があった。またそこでは脊髄小脳変性症の入院リハビリをやっている。 

文責:わかち誌編集部(なお誠に遺憾ながら録音に失敗し、概要を十分に記すことができず、また正確さにかけるところも多々あると思います。本当に申し訳ありません。ご容赦下さい。)


出張報告書

2018年 SCD・MSA全国患者連絡協議会の厚労省要望に参加して            

2018.6.14 松村 茂

このたび、SCD・MSA全国患者連絡協議会が行った厚労省への要望書提出に、北川事務局長と参加しました。その模様を私なりに理解した範囲で報告させていただきます。

日時  2018年6月12日(火)
    午前11時50分~午後2時40分
会場  参議院議員会館 204号室
参加者 協議会側 15人(5団体)
    厚労省側 19人(12部局)
出席国会議員
    尾辻かな子(衆院・立憲民主・大阪)
    川田龍平 (参院・立憲民主・東京)
    丸川珠代 (参院・自民・東京)

左から厚労省、尾辻、丸川、川田議員と共同代表

その日の富山7:19発の新幹線を利用、東京駅から地下鉄丸ノ内線の国会議事堂駅で降り、徒歩5分で参議院議員会館に9時40分頃到着しました。ボディチェックを受け入場、所定の時間まで会場で事前打合せを行いました。
川田議員の井波秘書が司会でその場を仕切る役割でした。事前に提出していた要望書の8項目を3部に分け、部ごとに厚労省側担当者を入れ替えての対応は慣れていて、さすがに議員秘書の仕事と感心しました。進め方としては、項目順に、①協議会側が口火発言、②厚労省回答、③自由質疑というやり方でした。

<質疑の経過>

要望内容は、1.治験の現状、2.iPS細胞等への財政措置を、3.医療費助成の手続き簡素化を、4.軽症者特例(重症度分類)の見直しを、5.新薬承認での海外のデータやiPS細胞の取り扱い、6.SCD/MSAのリハビリ充実、7.拠点病院の整備、8.既存の制度の徹底を、などです。(項目の詳細は連絡協議会ニュースを)

1については、「辻教授のコエンザイムは13施設で患者登録が始まり、6施設の倫理委員会で承認され、2施設で治験が始まっている。」(厚労省、以下厚)
2については、「iPSを使った研究はまだ基礎段階であり文科省の所管だ。」(厚)
3については、「臨床調査個人票が多項目にわたるが、対象疾患が拡大されたとき他の省庁から認定基準をしっかりやれと言われている。」(厚)
4については、「27年の難病法は5年目で見直すことになっているが、軽症者特例については見直しの対象とはなっていない。」(厚)
これに対し協議会から、「難病法改正前は毎年約1500人患者が増加していたが施行後は逆に1500人減った。これは今までにないこと。重症度分類によって3,000人もの患者が難病対策研究事業や医療費助成制度から排除されているのではないか」と反論しました。私も「この病気はふらつきが出てきた段階では重症度分類によるとせいぜい2で対象から外される。しかし進行性難病は症状の軽いうちから治療するほうが効果は大きい。近い将来、異常たんぱくの増殖を抑える新薬が期待されるが、重症度分類は早期治療を妨げる。進行性難病は確定診断が出たら即認定するという考え方はできないのか」と訴えました。
5については、「iPS細胞で病態を再現して薬効を確認する手法は注目しており、将来的には検討に値するが、一方でヒトの臨床試験の代替とはならない。現時点では科学的知見が足りない。」(厚)
6.7は省略。
8では、厚労省が「受給者証による適用が地域によって異なっているとは承知していない」と回答したことを受けて私が配布資料にそって、転倒事故によるケガの治療が受給者証記載の「付随して発生する傷病」として適用されない事例をあげ、特に北陸地方の行政のホームページでは対象医療の範囲を狭めた表現であることを説明しました。そして厚労省にたいし、対象となる医療の範囲や指定医療機関の取り扱いを法の制度より狭めて運用している都道府県に対し、是正の通知等を出すなど制度の趣旨を徹底してほしい」と求めました。

<個人的感想>

●治療法や新薬開発についての厚労省の回答は、運動失調症研究班の水澤先生たちから得られる最新情報以上のものはなかったと思います。
●ただし最新の知見について国としてどう受け止め、今後どんなテンポで臨床に応用していく考えなのか、その時点でのスタンスがわかるだけでも有益でした。
●そうした意味で、私たち患者側が大きく期待していたiPS細胞を使った創薬については、まだ研究段階で文科省マターであり、われわれ(実用)レベルではないと、厚労省が意外と冷静(慎重)であることがわかりました。正直がっかりでしたが、期待が前のめりになってはいけないと改めて覚悟できました。
●軽症者特例について厚労省は、初めは見直さないと断言していましたが、終了後、担当者が脊髄小脳変性症の難病登録患者数が減ったことについて関心を示していました。見直しにかじを切ってくれればよいと願っています。


会員の近況 

総会の出欠調査ハガキを利用し、会員の皆さんの近況等をお伺いしたところ、以下のお返事を戴きましたので、ここに紹介させて戴きます。

□ 私、車イスだから降雨出でなければ,12:00~14:20まで参加します。 

□ 病名の告知を受けて10年経過しました。加齢と共に病状が進行し、現段階では歩行が意のままにならず、専ら歩行器や車いすの世話になっています。総会や友の会に出席できず、ご盛会を祈っています。

□ 外出することが困難ですが(胃瘻・気管切開)状態は安定しています。(代筆 夫)
□ よく転倒するようになった!
□ 北陸病院に入院しているため。
□ いつもお世話になっています。最近は転倒が多くなっています。
□ 遺族です。よろしくお願いします。
□ いつもお世話様です。皆様と折角お知り合いになれて喜んでいましたが、主人は自分の意にそぐわないから脱会すると申しております。勝手で申し訳ありませんが、よろしくお願いします。いろいろありがとうございました。


短歌二首

さとみ

梨の花 咲き誇れ白 蒼い網
    過保護だけれど いつか実になる

青い空 雲がゆくゆく 孫二人
    なにが起きても 現実のまま


コーヒー・ブレイク

ー取り残されたオオ白鳥ー 

わかち29号の編集後記で、富山市の田尻池に北帰行に取り残された2、3羽のオオ白鳥がいることに触れました。その後ずっと気になっていたので、もういないだろうと思いつつも6月半ば過ぎ、頭の片隅にある不吉な予感を打ち消しながら田尻池に様子をみに行ってきました。
・・・一羽だけいました。・・・
多分傷ついた一羽だけ残して見守っていた他の白鳥も飛び立ったのでしょう。
私としては、今後の猛烈な暑さと虎視眈々と狙っている獣からの難をなんとか免れて、来年の冬に仲間と再会し、春には編隊を組んでシベリアに帰ることを心から願うだけです。   6/19 撮影


交流会

講演会終了後交流会を開催。
今回はこれまで参加されなかった会員の方や、新入会員の方の参加もあり、自己紹介、近況報告、意見など終始活発な雰囲気で行われました。


編集後記 

今年度の総会では、会員の方から要介護度や障害年金が下げられたという声を聞きました。これは介護度認定や障害年金等を取り巻く厳しい環境変化が反映しているのかもしれませんが、個人の状況変化もあり、なかなか難しい問題のように思います。しかし今後のためにも問題点を明らかにしておく必要があると考え、次号にそのまとめを掲載する予定です。
これから夏本番です。なんとか乗り切って秋の涼風を全身に感じたいですね。ではくれぐれも転倒、事故に注意してお過ごし下さい。(岩井正雄) 

わかち誌の原稿(近況、意見、要望など)をお寄せください。メール、手紙OK。お待ちしています。